あなたにspark joy

「そうだったんだ……」

「そんな事よりさ、飲もうよ」

ちょうど運ばれてきた二つのジョッキを見て前田さんがこう言い、私は頷くとその一つを引き寄せた。

「じゃあ、飲みましょう」

まだ残業だと思え、私!

だからまだ、ちゃんとニコニコと愛想よく。

……これを飲んで、少しだけ話したらすぐに帰ろう。

私はジョッキを眼の高さまで上げると、前田さんを見てニッコリと微笑んだ。

***

三十分後。

「あの、前田さん。私そろそろ帰ります」

さりげなく時計を見ながらビールを飲み終えると、私は頃合いを見計らって前田さんにこう切り出した。

案の定会話は弾まなかったし、そのせいなのか前田さんは飲みながら私をジロジロと見てばかりだった。

ちょうど会話も途切れたし、いいタイミングだと思った。

なのに、

「まだ飲みたいんだ、園田さんと。もっと飲みなよ。ちゃんと玄関先まで送るから」