前田さんはといえばいつも、どこかぞんざいな眼差しで他人を見ていて、誰に何と言われても横柄で……。
こんな風に我を忘れるというか取り乱すというか、とにかく緊張している感じでいるなんて意外だった。
「オッケイです。ゲートを通過する前にこのカードをかざしてください」
ガードマンに手渡されたカードを前田さんが受け取り、私を振り返った。
「行こうか、園田さん」
平静を装ってるようだけれど、前田さんの瞳は忙しなく揺れている。
……もう、仕方がない。
「はい」
私は少し微笑んだあと、ガードマンに頭を下げて前田さんの後に続いた。
***
前田さんに連れてこられたのは賑やかな居酒屋だった。
店内の騒々しさに幾分か救われて、私は出されたおしぼりを手に、前田さんを見つめた。
「前田さん、今日は本当に助かりました。私、シリアルID教えてもらってなくて。存在すら知りませんでした」
「そうなんだ。山崎製作所はね、去年実験棟で盗撮騒ぎがあってからセキュリティーがめちゃくちゃ厳しくなったんだ。だから定時内だと許可証と共通カードがあれば問題ないんだけど、定時後はシリアルIDが必要になるんだよ」
こんな風に我を忘れるというか取り乱すというか、とにかく緊張している感じでいるなんて意外だった。
「オッケイです。ゲートを通過する前にこのカードをかざしてください」
ガードマンに手渡されたカードを前田さんが受け取り、私を振り返った。
「行こうか、園田さん」
平静を装ってるようだけれど、前田さんの瞳は忙しなく揺れている。
……もう、仕方がない。
「はい」
私は少し微笑んだあと、ガードマンに頭を下げて前田さんの後に続いた。
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前田さんに連れてこられたのは賑やかな居酒屋だった。
店内の騒々しさに幾分か救われて、私は出されたおしぼりを手に、前田さんを見つめた。
「前田さん、今日は本当に助かりました。私、シリアルID教えてもらってなくて。存在すら知りませんでした」
「そうなんだ。山崎製作所はね、去年実験棟で盗撮騒ぎがあってからセキュリティーがめちゃくちゃ厳しくなったんだ。だから定時内だと許可証と共通カードがあれば問題ないんだけど、定時後はシリアルIDが必要になるんだよ」


