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「俺だってキミみたいな女が来るって分かってたら、ここにいないよ」

その言葉が耳に届いた途端、暑いのか、寒いのか分からなくなった。

いや、確か残暑なわりに朝夕は爽やかで、実際はどちらでもなかったけれど。

というか……なんですって?

女性に対して、そういう言い方はないでしょう?

私、園田真優(そのだまゆ)は、かなり上からこちらを見下ろす男性の無駄に整った顔を見て、驚きのあまり息を飲んだ。

この二時間前。

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駅の東口から程近い洋風居酒屋で、私は目の前に座る二名の男性にニッコリと微笑んだ。

ドアのある完全個室の空間には甘い蜂蜜色の照明が揺らめき、椅子の背もたれに施された透かし模様が、壁に繊細な絵を描き出している。

私はその空いた一脚の椅子を見つめながら、今夜の飲み会の主催者で、高校時代の親友である池田瞳の耳に口を寄せた。

「一人男が足りないけど」

「ホント。なんで?」

女性は私、瞳、恵里の三人に対し、男性が二名しかいない。

そのうちのひとり、瞳の彼氏である佐田君を外すと、狙える男性が一人しかいないわけで。