顔を少し横にズラして見てみると、緑色のネクタイをした3年が移動教室に向かうところだった。


ということは、もしかしたら杏もいるのか……?


そんな期待も持ちながら、通っていく生徒を見ていた。



「ねえ、渡部くん」


は……?


聞いたことのない声。

高い声からして女。


「渡部くん……?」


返事がないのに困ったのか、もう一度呼んできた。



ウザい……。



はあ……、と心の中でため息吐きつつ、


「……なに」


顔だけを上げて返事した。



「……えっと…」



大して用もないんだろーが。