雨はどんどん激しくなり私の身体はビルの出口の軒先では隠せようが無くて濡れた。


ワンピースが濡れ夏だと言うのに寒くなってきた。


これも自分自身に対しての罰だと思いながら私は待った。


ビルから作業着姿の男達が出てきた。

五、六人の中に彼が居た。


彼は私を見ると驚いた顔をして他の男達に先に帰って貰えないかと頼んだ。


他の男達は分かったと言いながら近くに停めていた車に乗り込むと雨の中を走り去った。


彼は参ったな傘がないなと言うと自分自身の作業ジャンパーを私の頭にかけた。


近くの駅まで送るよと言うと歩きだした。


私はこないだの事は本当に悪かったと謝った。
許して貰えなくても傷つけてしまった事は本心ではないしごめんなさいと謝った。


少しだけ謝る事によってほっとした。


「優しくも強くもなれないもんだね。
ああいう事は今までもあったんだよ。

それを上手く受け流す事が出来ないのは俺が未熟だからかも知れないよ。」


と彼は話した。


そんな事はない!私が悪いのだと大きな声で謝った。


「高校の時に樹が生えて医者にも行ったが原因は分からずに当時付き合い始めた女の子に気味悪がられて樹を伐ろうと悩んだが、これは自分自身なんだと何とか納得させたよ。」

彼は話した。



その後も色んな事からこの樹を伐りかけ辞めたが、今回初めて鋸で伐ろうとしたら血が出てねと笑った。


私は後ろからその部分を覗きこんで見たら小さな樹に鋸の跡がくっきり付いていた。



痛くないのかと聞くと今は多少沁みる位だから大丈夫だよと笑った。


今日の彼は珍しく饒舌だった。


「人に傷つけてられても優しくなろうと考えてるのになかなか上手く行かないね。」



そういうと雨の中私を抱き締めてくれた。


私は彼の髪の毛を探り優しく樹に触った。