彼と出会ったのは仕事帰りに時々寄るバーだった。


私の仕事はOLと言えば何となく格好いいが小さな町工場の事務員だった。


女の事務員は私と四十を越えたバツイチの井上さんだけだった。


しかし、社長も社員も女の人にはとても優しく給料も悪くはなかった。


私は若い社員から何度か告白されたりしたが、そういう気には、なれなかった。


それは、工場に勤めてる男だからと言うより自分自身に問題があったような気がする。


私は短大の頃に知り合った歳上の男と恋に落ちて同棲をして結婚まで約束したが、男には家庭があったのだ。


男はその事を秘密にして私と付き合っていた。


男にとって私は遊び以外の何でも無かった。


私はその男に相当な金額を貢いでもいて見事に騙された事を知った時にはショックよりも呆然として自分自身の馬鹿さ加減を呪った。


私はそれ以来男と上手く付き合えなくなっていた。


自分なんてまともな恋は出来ないのだと思い出会い系に登録して会うところまで行ったが相手がホテルに誘って来た瞬間に怖くなって逃げた事もあった。


そういう私でも結婚には憧れはあったし次々に友達が結婚していくのを見ると焦り色々考えてしまう。



仕事も順調のようだったが、一体本当に自分自身がしたい事なのか最近は分からなくなっていた。


全てが何かに突き当たってしまっていたような時期に彼に出会ったのだ。


頭に樹の生えた奇妙な男と。