「缶コーヒー買ってきてくれ」


 そう言って、薄ら笑みを浮かべる。


 頷き、停められた車を出て、近くの自販機へ走った。


 二人分のアイスコーヒーを買い、車へ戻って渡す。


 タクシーは私用車と見分けが付かない。


 だが、緊走時、回転灯を灯せば、パトカーへと豹変する。


 普段はひっそりと街を走る代物だった。


 その日も街の各所に出向く。


 事件の臭気を嗅ぐと、生臭さがもろに漂い出ていた。


 複雑なヤマだな。


 そう思いながら、買っていたコーヒーのプルトップを捻り開けて、口にする。


 眠気は、含まれているカフェインですっかり取れていて……。