翌日。
まるで惨劇を悲しむように、朝から土砂降りの雨になった。
撮影は急遽中止になり、
東さんを始めとする中心メンバーによって原因の追究が始まる。
リビングに集まったのはカメラマン15人と、
田所くんに風馬、苺さんと私。
そして東さんの口から被害状況が告げられて事態は鮮明になる。
壊されたカメラは5台。
根岸さん、浮城さん、流星さん、
カレンさん、北斗さんのカメラだった。
しかも破壊されたのはメインで使ってたカメラばかりだったことから、
カメラマンだけが呼ばれたらしく、
話し合いが終わると皆宿舎に戻っていく。

東さんは、北斗さん、流星さん、浮城さん、
根岸さんの4人に部屋へくるようにと声をかけ、
北斗さんたちは言われた通り、二階へ上がっていく。
根岸さんと浮城さんが二階に上がろうとしたとき、
ダイニングテーブルに座っている私と苺さんのところへ、
カレンさんが鋭い目つきで睨みながら近づいてきて声をあげた。


カレン「濱生さん、私のカメラを壊したのは貴女でしょ?
   正直に言いなさいよ。自分がやったって」
村田 「カレンさん!キラさんがそんなことするわけないでしょ!?」
カレン「証拠は?じゃあ何故、あの部屋にモップがあったの?
   あの部屋は掃除無用だもの。
   しかも貴女、以前も流星とあの部屋に入ってたわよね。
   部外者が何故あの部屋に出入りするのよ!」
星光 「それは……」
カレン「貴女が来てから、皆の集中力が無くなってきてるのよね。
   それがどういうことかわかる?
   良い作品ができないってこと!
   だからこんな事態になってるんじゃないの!?
   カメラマンでもない、
   ただの飯炊き女が私達と同等なことしないでほしいわ!」
風馬 「おい!お前、言い過ぎだぞ!
   星光がみんなに何をしたって言うんだ!
   それにこの騒ぎ、そういうお前がやったんじゃないのか!?
   そうやって嫌がらせして、
   星光をここから追い出そうとしてるだけだろ!」
カレン「貴方!バカじゃない!?
   そんなことの為に私が自分のカメラを壊したとでもいうの!?
   私のカメラ一台幾らすると思ってるのよ!
   貴方達二人の月収を足したって、買える代物じゃないのよ!
   まったく!低レベルな人種は同志愛も強いってわけ。
   ふん!笑わせないで!」
星光 「風馬は関係ありません!これは……すべて私の責任です」
村田 「キラさん!?」
風馬 「星光!?お前、言ってるんだ!」
星光 「(私がもっと早く気がついてればこんなことにはなってない。
   それに……これ以上、七星さんに迷惑をかけられない)」
カレン「やっぱりそうだったのね(笑)」  


勝ち誇ったように微笑むカレンさんに、
階段の途中で立ち止まり、
ずっとやりとりを聞いていた根岸さんが声をかけた。
その発言に私はもちろん、苺さんに風馬、
一緒に話を聞いていた浮城さんまでもびっくりする。


根岸 「カレンさん。それは俺がやったんだ」
カレン「えっ!?」
浮城 「根岸……そんなわけないだろ。
   お前、昨夜は」
根岸 「いいんだ。俺が全部やった。
   彼女はそれに気がついて、
   モップで俺を叩いて止めようとしたんだ」
星光 「根岸さん!?」
根岸 「最初に壊したあんたのカメラがいちばん壊し甲斐があったよ。
   魔女退治みたいで気持ちよかったぞ。
   ストレスもぶっ飛んだ!」
カレン「なんですって。
   貴方……ここに居られないわよ!」
根岸 「ああ、いいさ。
   ご要望とあらば今すぐにでも出ていくぞ!」


驚いたように見上げるカレンさんと怒りの目線で見下ろす根岸さん。
目の前で散った火花は、
まるで火のついた爆弾の導線のように私には見えた。
一触即発の危機がすぐ目の前に迫っているように……

(続く)


この物語はフィクションです。