「そういやエルちゃん。
シエル、何で足怪我しているんだ?」
「え?」
「もしかして……ご両親にやられた時にか?」
「……そういえば、いつだったのかしら」
その前にはシエル、ソンジュさんとベレイくんによって怪我も負っている。
その時に……?
「そういえば、アンスに見てほしい映像があるの」
わたしは机の鍵がかかる引き出しから、小さなカメラを取り出す。
アンスに渡すと、説明も何もしていないのにアンスは再生し始めた。
「……んだよ、これ」
「シエルが両親に誘拐紛いのことされる前に撮られた映像なの。
これでわたしもその動画見て、少しシエルが怖くなって…。
寮の部屋で謹慎っぽいことさせている間に、
シエルが人助けをして寮を出て行って、両親に出会ってしまったの」
「そういや、シエルの両親って……?」
「1番最初にノール村にシエルを助けに行った時、
一緒に呼んでおいた警察によって逮捕されたんだけど、
警棒を持って脱獄したらしいの。
今は厳重に取り締まってもらっているから、シエルに近づくことは出来ないわ。
近寄るのさえも禁止になっているから、近寄るだけで今度は罪になるほどね」
「……かなり厳重だな」
「そうでもしないと、シエルが危険だわ。
ただでさえ今回も危なかったんだから……」
わたしの声が聞こえて、切らなかったとシエルは言っていたけど。
もしわたしの声が聞こえなかったらと思うと、恐怖しかない。
シエルをこれ以上傷つけるのは、わたしが許さない。
「…で、この映像は……」
「倒れているメイド服の女性はソンジュと言って、
この映像を撮っているのが執事のベレイよ。
シエルが地下に呼び出していきなり首を絞めたとふたりは証言しているけど、
わたし…シエルが首を絞めることないと思うの」
「でも…この映像だと間違いなくシエルだよな」
「信じられないのよ。
シエルに言っても自分がやったって言われちゃうし。
加工映像じゃないってことは、実はもう調べてもらっているんだけどね…」
「…俺もシエルが手を出すと思えねぇけどな…。
シエルとそのメイドか執事は、関係あるのか?」
「シエルが前にティラン伯爵の元で働いていたのだけど、
その時の仕事仲間だったみたいだわ。
執事は違うみたいだけどね」
そこでわたしは思い出す。
ずっと誰にも見せず、隠していた冊子を。
「アンス、これを見てちょうだい」
わたしが引き出しの奥から取り出したのは、くすんだ白色の冊子。
これはシエルと初めてティラン伯爵の元で出会った際、
お屋敷の中で拾った冊子だ。
「ティラン伯爵の元で働いている使用人たちの掟なの。
もしかしたら、これが関係あるかもしれないわ」
アンスは探るようにページをゆっくりめくり、
徐々にその顔が驚きと戸惑いに満ちていく。
「……んだよ、これ…」
「この『生贄』が、もしシエルをさすとしたら…」
「その可能性もあるな。
そのメイドがここで一緒に働いていたのなら、その時に何かあったのかもしれないな」
「復讐ってこと?ソンジュさんの」
「わからねぇ……。
そのソンジュってメイドは今どこにいるんだ?」
「警察署でベレイくんたちと一緒に保護されているわ。
シエルに近づく恐れがあるから……」
「そのままにしておいた方が良い。
シエルをこれ以上傷つけるわけにはいかねぇからな」
わたしとアンスは、小さく寝息をたてるシエルを見る。
前は10分ほど寝ては起きてを繰り返していたけど、最近では時間が延びてきた。
このまま延びれば、少しはシエルの傷も癒えるのかな……。



