派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 



「どうだった?」

 蓮が総務に下りると、急いで真知子がやってきた。

「総務から秘書に売られてしまいました」

 脇田が総務本部に電話をすると、どうぞどうぞ、と簡単に売られてしまったようだ。

 誰も社長の機嫌は損ねたくない。

「すごいじゃない、秘書」
と喜んでくれたかけたあとで、

「……大丈夫?」
と訊いてくる。

「大丈夫じゃないですー。
 なにかをやらかさない自信が欠片もありません」

 真知子以上に自分が不安だ。

「大丈夫だ。
 とりあえずは、浦島について仕事を教われ。

 接客が必要な仕事はお前には回さない」

 そんな声がして、いきなり上から頭を押さえられる。

 渚が後ろに立っていた。

「社長っ」
と慌てて、総務本部の中から、本部長が飛んできた。

 どうぞどうぞ、秋津を使ってやってください、とやはり、気安く売られてしまう。

「さっさと荷物をまとめて来い」

 渚に見下ろされ、そう言われる。

 逆らえば、会社から叩き出されそうな雰囲気だ。