派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 秘書室に入り、扉を閉めたところで、蓮が、
「脇田さん~。
 秘書室とか勘弁ですーっ。

 あっ、すみませんっ」
と言う。

 謝られて、パソコンを打ちながら聞いていた葉子が笑っていた。

「いや、立派なお仕事なのはわかります。
 でも、私は向いてないです」

「まあ、仕事が出来るのと秘書に向いてるのとは、またちょっと違うからね。
 渚もわかってるとは思うけど。

 君の顔を見てたいんじゃない?」
と言うと、

「いや、全然そんなラブラブな気配を渚さ……社長からは感じませんが」
と言ってくる。

「うーん。
 そう見えるかもしれないけど。

 僕は今の状態でもかなり驚いてるけどね。
 あいつ、本当に仕事しかない奴だから。

 君につきまとう暇なんてないはずなんだけどね」

「つきまとうって……」
と葉子が顔を上げ、苦笑いしていた。

「浦島さーん」
と蓮は葉子に泣きつこうとする。