派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 言いたいことがまた、二つばかりあるのだが。

 だから、私は蓮子じゃないし。
 ……誰に告白してるんですか、貴方は。

 そんな淡々と言われても、ときめきませんしっ。

「ときめきませんっ」
と口に出して訴えると、

「そうか。
 じゃあ、やっぱり、デートでもするか。

 でも忙しいんだよな、今」
と渚はデスクの端にあった手帳に目を落とす。

「おお、そうだ。
 やっぱり、お前、今すぐ秘書に来い。

 それで、脇田がスケジュール調整するのを手伝え。

 俺とデートするために」
と言ってくる。

 いや、そこまでして、貴方とデートしたくはないんですが……。

 やっぱり、この人と結婚したら、ちょっと寂しい結婚生活が待ってそうだな、と思う。

 私の理想は、狭いながらも楽しい我が家なんだが。

「それにしても、そんな私情で派遣社員の配置を勝手に変えてもいいんですか?
 必要だから、総務に入れたんですよね」

 やっと総務の人間関係に慣れてきたところなのに、と思いながらそう言ったが、渚は、
「いや」
と言う。