「それ、他の独身の方も言われたんですか?」
と訊いたが、いや、と言う。

 ふーん、と思ったが、渚には言わなかった。

「まあ、でもあれですよ。
 お爺様がおっしゃってたのはですね。

 子供を作れってことじゃなくて、貴方に結婚して家庭を持てと……

 ちょっと、聞いてますか?」

 振り返ると、渚は腕を組んで座った体勢のまま、爆睡していた。

「……この人と結婚する人、大変そうだな」

 他人事のようにそう呟き、重い渚の身体をなんとか横にした。

 毛布と布団を持ってきてかけてやる。

 身体が大きいから転がり落ちそうだが、これ以上はどうにもしてやれない。

 せめてネクタイだけでも外してやろうとしたが、うまくいかず、起こしてしまいそうだったので、少しだけ緩めてやった。

 やれやれ。
 誰にもこんなことしたことないのに、トホホだな、と思いながら、戸締りをして寝た。