「しきみは毒があるから、虫がつかなくていいんだ」
とよくわからないことを言う。

 本当は虫に弱いという話もありますが。
 まあ、とりあえず、今は貴方が悪い虫ですけどね、と思っていた。

 だが、疲れているのに、わざわざ買ってきてくれたのは嬉しくもある。

「ありがとうございます。
 じゃあ、お茶でも飲んで帰ってください」

 さりげなく、そろそろ帰って、と言ってみたのだが、渚は、
「此処、会社から近いな」
と言い出す。

「……入り浸らないでくださいよ」
と睨んだが、聞いていない。

 ソファに戻り、お茶を飲んでいた。

「来年のジイさんの誕生日までに子供がいるんだ。
 十月十日で産まれるんだったかな」
と言ってくる。

「本当に十月十日なわけじゃないですよ。
 一月の数え方が違いますから。

 ところで、お爺様の誕生日は、来年のいつですか?」
と訊いてみたら、ほぼ一年後だった。

 どうやら、最近あった誕生会でそう言われたらしい。