「私は行かないですけど。
 貴方が花でも贈って、申し込めばきっと……」

 そう言いかけたところで、渚は起き上がり、蓮の後ろのルイボスティーに手を伸ばす。

 おっと、と避けると、彼は熱いそれを一口飲んで、立ち上がり、いきなり出て行った。

 バタン、と閉まった玄関の扉を見ながら、なんか怒ったのかな? と思う。

 ほとんど飲んでないじゃん、と思いながら、せっかく淹れたルイボスティーを見て、溜息をつく。

 ……寝るか、と思い、洗面所に行った。

 歯を磨いたあとで、そうだ。鍵かけてなかったな、と気がつき、玄関に行くと、勝手にドアが開いた。

「ほら」
と渚がビニールに包まれた緑のものを差し出してくる。

「花はなかった」

 包みに貼られたシールには見覚えがある。
 どうやらこの間のコンビニに行ってきたようだ。

「……これ、しきみですよ」

 せめて、榊ならよかった、なんとなく……。

 夜のコンビニだ。
 仏壇に飾ったりするような生活必需品しかなかったのだろう。