「ジイさん、本人が望むなら、とりあえず、子や孫たちを系列の会社に入れたり、任せたりはしてくれるんだが。

 あのジジイ、身内だろうが、経営手腕がイマイチだと平気で解任したり、僻地に飛ばしたりするからな。

 それで気が抜けないから、ずっと仕事ばっかりしてたのに、今度は子供を作れとか……」

 眠いのか、呟くように言いながら、渚は肘掛に頭を置いた。

「無茶を言うなってんだ。
 こっちは、てめえの言うがままに働いて、女なんぞ知らんと言うのに」

 その顔でか、と思った。

 いや、顔は関係ないが。

 蓮は溜息をつき、ルイボスティーを彼の前のテーブルに置いた。

「何度も言うようですが、貴方が誘えば、ついていかない女は居ないですよ」

 渚の前に膝をつき、そう呼びかけると、

「お前は俺を買い被りすぎだ」
と言ってくる。

 ……そうだろうか?
と思っていると、渚は片目を開け、

「とりあえず、お前、ついて来ないじゃないか」
と言う。