派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~





「なんだ、生きてるじゃないですか、脇田さん」

 昼休みが終わり、仕事でロビーを通ったとき、脇田に出会った。

 冷ややかにそう言うと、
「……あれ? もしかして、もうバレちゃった?」
と脇田は笑顔のまま言ってくる。

「私にとり憑いてる渚って悪霊は、此処の社長だったんですね」

「そうそう。
 僕の古い友人でもあるんだけどね。

 ああ、この間のコンビニでの話とかは、渚に……社長にはしてないよ」

 まあ、ちょっと自己保身の意味もあって、と脇田は言う。

「自己保身?」

「いや、君に怪我させたなんて、社長に知れたら、殺されそうだから」

「じゃあ、うちの住所教えたの、脇田さんじゃないんですか?」

「違うよ。
 どうしたの? ついに家もバレちゃった?」

「少々犯罪を犯して、住所を手に入れたって言ってましたよ、お宅の社長」
と言うと、

「あー、人事に頼んじゃったかな」
と言う。