派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 さすが渚は野生の勘で、気を抜いたらやられる相手だと悟ったらしい。

「蓮を渡せ、ジジイ」
と更に高圧的に言ってきた。
 
 土下座しに来たんじゃなかったんですか? 渚さんっ。

 最初の目的、覚えてますかっ? 渚さんっ。

 だが、もちろん、統吉も負けてはいない。

 普通の人間ならそれだけで怯む眼力で渚を見上げる。

「蓮はわしが手塩にかけて育てた孫じゃ」

 いえ、育てたの、友江さんですけど……。

「泥の中でも凛と咲く蓮の花のようにと育てた娘じゃ」

 ほう、と腕を組み、渚は言う。

「その穢れない孫娘様は、もう俺のお手つきで、穢れてしまったから、よそ様には差し上げられないよな」

 渚さーんっ!

「誰も引き取り手がないだろうから、俺がもらってやろう」

 さすがの祖父も此処で呆れたように、疑問を呈してきた。

「……お前。
 頭下げて蓮をもらいに来たんじゃないのか」

「下げてるだろう」

 一度も下げてないですよっ?