派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

「此処でお前にプロポーズしたんだった」

「違いますよ。
 なに記憶を捏造してるんですか。

 いい骨盤してるから、今すぐ俺の子供を産めと言ってきたんじゃないですか」

「同じことだろう」

 いや、全然違うぞ、女子的には……。

「あれ? 煙草吸いに来たんじゃないんですか?」
となにも持っていない渚の手に気づき、問うと、

「ああ、やめることにした」
と渚は言う。

「え、そうなんですか?」

「お前のためにも、元気で長生きしなきゃなーと思って。

 それで……」

「それで?」

 渚は、こちらを見下ろし、
「まあ、気が向いたら、俺の子供も産んでくれ」
と言う。

 一年以内に必ず産めじゃなくなったな、と思って笑う。

 自分に子供が出来たときのことを考えて、煙草をやめたんだろうな、とは思うが。

「今すぐ、いるんじゃなかったんですか?」