派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 




「蓮ちゃん、お使い行ってきてー」

 葉子に言われ、はーい、と蓮は急ぎの郵便物を持って立ち上がる。

 郵便局の帰り、あの駐車場脇の階段に座り、ぼんやり空を見た。

 後ろに誰か立つ。

「なに考えてるんだ、蓮」

「いや、もこもこっと浮かんでるようで、意外に速く流れてるんだなー、雲って、と思って」

 振り返ると、渚が立っていた。

「……一人で解決しようとするなよ、蓮。

 お前は俺が守るから」
と言ってくる。

 祖父の家に行ったあとから様子がおかしかったことに、やはり、気づいていたようだった。

「なんででしょう。
 渚さんだと、くさいセリフ言っても、なにか違和感がないんですよね」
と笑うと、

「本心だからだろ」
と言う。

 そうだな。
 渚はなにも駆け引きとか考えない。

 思ったまま、すべてを口から出している。

「此処で最初に会ったんだったな」

 感慨深げに渚も空を見上げていた。