派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

「あのさ、蓮。
 その肉を切らせて骨を断つみたいなやり方はやめた方がいいよ。

 じゃあって男が居たらどうすんだよ。

 ちなみに、僕なら言うよ。
 じゃあって。

 あの社長に殺される前に、今生の思い出にって」

「大丈夫だ。
 お前がなにかする前に、殺すから」
と未来の後ろから、声がする。

 渚が顔を出した。

 やはり、ケモノ……。

 未来は和博を見張っていて此処に来られたのだろうが。

 この人のは、やっぱり、ケモノ的勘かもな、と思っていた。

 つい、笑ってしまう。

「この状況で笑うか」

 呆れたように渚が言う。

 脇田はまだ蓮の脚の上に座ったままだし、蓮の服も乱れている。

 でも、脇田は渚を裏切らなかったし。

 渚はやっぱり来てくれた。

 落ち着き払っているように脇田には見えていたかもしれないが、本当はちょっと怖かった。

 もしかしたら、という思いもあったからだ。

 だから、渚の顔を見たとき、本当は泣きそうなくらい嬉しかったのだ。