派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

「……私、渚さんのお爺様にお会いしたことがあるんですよ。
 少しご挨拶しただけですけど。

 人を見誤るような方ではなかったですね。

 あの方が渚さんを後取りにと思っているのなら、渚さんはそれ相応の人だろうと、最初からそれだけは思ってましたよ」

 脇田は溜息をついて言った。

「君は渚のいい奥さんになるよ。
 その身を呈して、僕の離反を防いだんだから」

「いえ。
 単に、脇田さんを信頼してただけですよ。

 そうでなければ、もっと早くに呼んでます。

 未来」
と脇田の後ろに向かい言うと、さっき、咄嗟に靴を蹴って、突っ込み、薄く開いていた玄関から、未来が顔を出す。

「あのさあ。
 そう何度も都合よく僕が現れると思わないでよ」

「来ると思ってたのよ。
 だって、和博さんがウロウロしてたから、貴方が見張ってるはずだと思って」

「僕、君んちのお庭番じゃないんだからね、ほんとに」

 溜息をついたあとで、未来は言う。