派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

「いや……それでもいい」
と脇田は言った。

「じゃあ、どうぞ」
と言いながら、自分で、どうぞってのもなー、と思っていたが。

 その間に、脇田に廊下に倒される。

 そのまま、上になった脇田が口づけてきた。

 だが、何度目かの口づけのあと、脇田は迷うように動きを止めた。

 床に手をつき、蓮から身を離すと、目をそらして言う。

「やっぱり、駄目だ……。
 僕は、なんて根性なしなんだ」

「いや、逆だと思いますけど」
と言いながら、蓮は起き上がる。

「全然抑えの効かない渚さんの方が問題ありありですよ」

 でも、そういえば、日々、せっせと薔薇だの、菊だの、しきみだの……、貢いでくれたあとだったな、とは思う。

 脇田は、こちらを恨みがましく見て言ってきた。

「こうなるとわかってたんだね?」

「貴方は渚さんを裏切れないと思ってましたよ。
 そういう人だからこそ、渚さんが無理矢理にでも、貴方を自分の会社に入れたんでしょうから」

「それって、結局、渚を信頼してるってことだよね」

 渚の人を見る目を、と言う。