派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

「僕が渚を裏切ろうとするなんて」

 でも、無理、と脇田は言った。

「君を諦めるなんて、やっぱり出来ないみたいだよ」

 そう言いながら、脇田は蓮の腰に手をやり、抱き寄せ、口づけてくる。

 強引な渚と違って、何事もスマートな人だが、今日はさすがに、ちょっと違っていた。

 感情が先走って、力の加減が効かないようだ。

 離れた脇田は、蓮を見つめて言う。

「生まれて初めて、渚を裏切ってまで欲しいと思ったんだ。
 僕のものになってよ、秋津さん」

「……いいですよ」

 蓮がその目を見つめ返して言うと、脇田は目を見開く。

「それで脇田さんの気が済むのなら」

 脇田がなにか言いかける。

「でも、私、脇田さんのこと、嫌いになりますけどね。

 渚さんも黙ってても気づきますよ。

 なにかこう……ケモノに近い人だから」

 異常に勘がいいもんな、と思っていた。