派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

「いえ……。
 ほんとのことです。

 私もずっとそのことを考えていたので。

 和博さんには、ああやって言い返せるんですけど、実は私、お爺様には弱いんです」

 だから、本当は、これから先、どうしたらいいものかと迷ってるんです、と白状する。

 渚と別れる、という選択肢がないのは確かだが。

 だが、脇田は、
「……ごめん。
 そうじゃないんだ」
と言ってきた。

「君と渚のことを心配してるのも本当だけど。

 そうじゃない気持ちも僕の中にはあって。

 もうわかってると思うけど。

 その……好きなんだ、僕は。

 秋津さんのことが」

 いや、わかってなかったです、と言いたかったのだが、なんだか言える雰囲気ではなかった。

「渚のことは嫌いじゃないよ。
 上司として、尊敬してる。

 ついていくに値する人間だと思ってる。

 人としてっていうか、友達としては、…… まあ、いろいろとあれだけど」
と言葉を濁す脇田に、まあ、そこは同意だな、と思っていた。