派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

「他にもなにかいろいろ持ってたぞ」

「傘から毒針が飛び出したり?」

「……そりゃ暗殺道具だろ」

 スパイから離れろ、と言われる。

 お隣スパイ説がまだ渚の頭にもあるようだった。

 いや、子供のしつけにはよさそうなんだが、と思う。

「ふーん。
 うちの地下室には先祖代々の拷問道具がありますけどね」

「張り合うな……」
と言いながら、渚は、手錠を振った。

 あっ!

 蓮の手に手錠がかかる。

「ああ、鍵忘れたな」

「渚さん~っ」

「隣のスパイにでも外してもらえ」

「だから、お隣、スパイじゃないですってば。
 ……だんだん、そんな気がしてきましたが。

 人間の思い込みって恐ろしいですね」

「まあ……外すの後にしろ」
と言って蓮を抱き寄せる。

 確かに。

 今はなにも考えたくないな、と思っていた。

 家のことも、未来が言っていたことも。

 ……とりあえず、鍵がないことも。