派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

「和博は勇気があるな。
 俺なら俺に会いに行く自信はない。

 うっかり、俺に愛されている俺を見たら、俺は俺を殺してしまって。

 捕まった俺が刑務所に入っている間に、お前は、その俺と結婚してしまって。

 出てきた俺は、今度はお前を殺しに行くんだ」

「すみません。
 その果てしない妄想、何処かで止めてください」

 っていうか、俺が出てきすぎて、なんだかわからないんですが。

 妄想の中でも、俺以外を蓮の相手に据えたくないらしく、恋人も俺で、嫉妬するのも俺になっているので、話がややこしくなっていた。

 そんな俺尽くしの中で、
『お前を殺しに行く』
 だけが浮いていて、明確なので、ちょっと怖かった。

 恋は人を疑り深くするものだな、と思いながら、蓮は渚を見つめて言った。

「渚さん、大好きです」

 そらさず、その目を見つめる。

「……信じられませんか?」

 渚は黙って、蓮を見ている。

 疑って、というのではないだろうが、なにも言わずに蓮の瞳を見つめていた。