派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 祖父に連れられて知り合いの寺に行き、森の中の本堂で、座禅をさせられたときのことを蓮は思い出していた。

 すがすがしい気分だ。

 心を研ぎ澄まさせすぎた蓮の目の前には竹林が広がり、足許には、本堂の冷たい床の感覚が蘇っていた。

 目を閉じ、意識を集中して。

「……はい」
と蓮は言った。

「おい……、精神修行してんじゃないぞ。
 俺は真実を知りたいんだ」

「真実……」
と呟いた蓮は、目を開け、

「本当に知りたいですか?」
と渚を見つめる。

 渚は、うっ、と詰まった。

 世の中には、知らなくていい真実もたくさんあるに違いない。

 ……とか思ってしまったが。

 よく考えたら、知られたくない真実など何処にもなかった。

 つい、渚のテンションに釣られて、重々しく言ってしまったが、そういえば、やましいことなど、なにひとつない。

「知りたいですか? 真実」

 一応、そう訊いてみた。

 すると、渚は、
「いや……知りたくないかもしれないな。
 お前のことに関しては、俺は小心者なんだ」
と言い出す。