派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 



 未来に送ってもらった蓮は、部屋のソファに座り、渚を待っていた。

 雑誌のページをめくっていたが、いろいろとよそ事を考えてしまう。

 課長代理とのことを渚に話してしまったこと。

 そして、和博が、未来が言っていたこと。

『蓮、愛ですべては乗り越えられないよ』

 そんなことはわかってる。

 でも、今更、渚さんから離れるなんて出来ない。

 そんなことを考えながら、肘掛に頭を乗せ、目を閉じた。

『今までの過去も思い出も、秋津に生まれた責任も、全部捨てて出ていけるの?』

 ……いかん。
 走馬灯のように子供時代のことから思い浮かぶな。

 死ぬ気か? と自分で自分に突っ込んだとき、チャイムが鳴った。

「はっ、はいはいはいっ」
と蓮は慌てて玄関に出る。

 開けるとすぐに、
「いい加減、鍵寄越せ」
と渚が言ってくる。

 その顔を見て、ほっとしながら、
「いいですよ」
と言った直後に、

「いやっ、駄目ですっ」
と叫んでしまう。

「……なんでだ?」
と渚が胡散臭そうにこちらを見た。