派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

「今みたいな家出ごっことは違うんだよ。
 会長ともご両親とも、うちのおばさんとも、みんな縁を切って、出ていける?」

 全部投げ捨てた蓮とは、僕も付き合わないよ、と未来は言った。

「だって、それは、僕も捨ててったってことだから」
と未来は目を伏せる。

「今までの過去も思い出も、秋津に生まれた責任も、全部捨てて出ていけるの?」

 確かに。

 あの家に生まれたからこその苦労もあったが、随分、幸せも享受してきた。

 なのに、恩を返さなければならないところで、すべて捨てて出て行く人でなしになれるかと言うと……。

「蓮、愛ですべては乗り越えられないよ」

 そんなことはわかってる。

 口先で言うのは簡単だけど。

 そんなことが楽に出来るのなら、この世に政略結婚なんてものが、延々と存在していたはずはないから。

「そういう夢が叶うのが理想だろうけど」

 夢だと未来は切って捨てる。

 俯いていると、……蓮、と未来が呼んだ。

 顔を上げる。

「助けてっていいなよ。
 僕は、すべてを捨てても、蓮を助けてあげるよ」