お前こそ誰だ、と思いながらも、
「派遣社員様です」
と答えると、

「そうか。
 最近来たんだな。

 道理で見たことないと思った」
と言う。

「まあ、見たことない奴の方が多いんだが。
 お前みたいなのが居たら、すぐに目につくからな。

 派遣社員なのか」
と確かめるように訊いてきた。

「はい。
 会社の上司にビールかけて辞めたので、派遣社員に」

「それはなかなか豪気な女だな。
 今、何処に居るんだ?」

「総務です」
と言うと、ふうん、と言う。

「名前は?」
「……秋津蓮です」

「男みたいな名前だな」
「蓮の花の咲く頃産まれたので」

 失礼な奴だなーと思っていると、
「俺は渚だ」
と言ってくる。

 なるほど。
 この人も男だか女だかわかんない名前だな、と思った。

「じゃあな、蓮」
と煙草を消して、律儀に携帯灰皿に入れた渚が手を振る。