派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

「まあいい。
 俺もそこのところは追求したくない」
と渚は腕を組んで、渋い顔をする。

「お前の過去をほじくって、余計なことが出てきたら、お前とキスした男、肩を組んだ男、手をつないだ男、全部射殺して歩きたくなるから」

「その基準だと、幼稚園の同級生、全員撃ち殺すことになりますが」
と言うと、また、盆で叩かれた。

 何処まで本気だ、と言われて。

 いや、それは、あんただ、と思っていた。

 高校でも、キャンプファイヤーで肩を組んだぞ、と思ったが、余計怒りになにかを注ぎそうなので、やめておいた。

「ほんとに関係ないんですよ~。
 ちょっと呑み会の前からゴタついてはいたんですが、直属の上司だし、我慢してたんですよ。

 そしたら、みんなの居る前で、私の仕事なんて、所詮、お嬢様のお遊びだとか、ミスしても、親の威光で見逃してもらえるとか言い出して。

 もう頭に来て。

 そんなの言われたの、初めてじゃないですよ。

 でも、あの人に言われたから、頭に来たんですよっ」

 信頼してたのにっ、と蓮は今更ながらに悔しくなり、地団駄を踏む。