今日はいつもより早かったので、蓮のマンションに着くと、ちょうど蓮が部屋の鍵を開けているところだった。

 そっと近寄り、後ろから目を塞いたが、間髪置かずに、
「未来、なにやってんの」
と言われてしまう。

「面白くないの」
と言うと、

「すぐにわかるわよ」
と蓮は笑った。

 子供の頃から変わらない笑顔だ。

 だが、
「蓮、なにか困ったことがある?」
と未来は訊いた。

「まあ、二つばかり」
と言うので、

「助けて、未来って言ったら、いつでも助けてあげるよ」
と言ってみたが、蓮は、

「私、未来にも友江さんにも泣き言は言わないと決めたの」
と言ってくる。

 強い瞳だ。

 この目が好きだな、と思っていた。

 きっと、稗田社長も、和博さんも、……あの人も。