「それもあるけど。
 僕自身が気になるのもあって」
と白状すると、同情を買ったのか、

「脇田さんもなかなか大変ですね」
と言われてしまった。

「いやその、秋津さんがちょっとでも付き合ってくれないかな、と思って、その、脅してしまったんですけど。

 もうやめますから、心配しないでください」

「脅すって、なにで?
 彼女が前の会社の上司にビールかけてやめたことじゃないよね」

「それ、いい加減、社内に広まってますよね」

 脅しの材料になりませんよ~、と奏汰は言う。

「秘書に上がったし、社長がつきまとってるのも知られてきたし。

 復讐に呑み会でビールかけられるんじゃないかってうちの部長が怯えてましたよ。

 以前、セクハラまがいのこと、言ったことがあるらしくて」

 あー、まあ、ビールはかけないと思うけど、と苦笑いした。

「でも、なにで脅したのかは言えませんよ。
 だって、僕がバラすことになっちゃうから……」
と言いかけ、ふと気づいたように言う。