「なっ、なんなんですかっ。
 もう~っ」
と頬を押さえて、遠ざかると、

「仕事中だから、遠慮して、唇はよしてみた」
 偉いだろ? と言うように言ってくる。

「いや、あの、全面的にやめてください」
と言い、窓の方を見た。

「外から撮られてても知りませんよ」
と目を細め、睨む。

 ……撮りそうな奴、居るしな、と思いながら、ブラインドを下ろしていると、いきなり、渚が後ろから抱きついてきた。

「なっ、なんなんですかっ」
と腰に回ったその手をはたくと、

「いやいやいや。
 お前自ら部屋を暗くするから」

 誘ってるのかと思って、と髪に唇を寄せながら、言ってくる。

「いやあの、なんでそう緊張感がないんですかっ。
 渚さん?

 渚さーんっ?」

 そう叫びながら、そういえば、今自分たちが置かれている状況がどんなものなのか、自分しかわかっていないのだから、渚に緊張感があるはずもないかと思っていた。