派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 



 結局、クマを抱いたままだった蓮は、ベッドに転がったまま、さっきの結婚式の話で、文句を言う。

 いや、文句があるのは、渚に対してではないのだが。

「いい大人がいちいち、結婚するとかしないとか、親に報告しなきゃいけないなんておかしくないですかね?」
と言うと、渚はクマを取り上げながら、

「祝ってもらえるんなら、祝ってもらえ。
 まあ、俺も人のことは言えないが」
と言ってくる。

「お前を育てた人たちだからな」

 ……育てられただろうかな、と蓮は眉をひそめてしまう。

 だったら、一番懐かしいのが、未来の叔母の手料理なんてことがあるだろうかと思う。

 うーん、と渋い顔をしながらも、俺も人のことは言えないがってなんだろうな、と思っていた。

 前から気にはなっていた。

 渚の話に、ジイさんと徳田さんの話は出るが、ご両親の話は出てこない。

 居ないわけではないのは知っているのだが。

 あれかな。
 何処かの国の貴族みたいに、各子供に城があって、親と滅多に接点がないとか。

 そんな莫迦な……。

 クマを抱いたままキスしてこようとする渚を押しのける。

「考え事してるんで、やめてください」

「なにしてても、考えられるだろうが」