派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 




「そうだ、蓮。
 式場は何処がいい?」

 はい? と珈琲の缶を持ったまま、蓮はキッチンで顔を上げた。

「これが、徳田お薦めの式場だ」
とパンフレットを一通り出してくる。

「はあ、徳田さん、お薦めの……」

 それは断れなさそうだな。

 この中から選ぶしかないのか、と思った。

「お前の親にも断らなきゃいけないがな、蓮」

 パンフレットを見たまま、渚は言う。

「……そうですね」

 蓮は側に座り、そのうちの一枚を手に取った。

 森の中の美しい教会だ。

 真っ白な尖塔が太陽の光に映える。

 夢のように綺麗な場所だな、と思った。

「そこにするか?」
と渚が横から覗いてくる。

「あんまり人が入りそうににない小さな教会ですけど、大丈夫ですか?」

「いや、誰も呼ぶつもりはないから」
と渚は言い出した。