派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 



 脇田と別れて、蓮はマンションに入る。

 困ったな、どうしよう、と思う。

 脇田のことではない。

 奏汰のことだ。

 ああいうタイプが一番困るんだよな。

 脇田の誘いに乗るのも、真知子に言わせると問題あるそうだが。

 やはり、同じ部署だし、いつも顔合わせてるし、お世話になってるし、断れない。

 ……待てよ。
 前もこんなことあったな、と思いながら、エレベーターを待つ間、スマホを見ていた。

 未来の番号に合わせたあとで、うーん、と唸る。

 助けて、と一言言うのは簡単だ。

 だが、未来はあの顔で冷ややかに見て言うだろう。

『へー。
 助けは借りないんじゃなかったの?』

 そうですね。
 そうですよね。

 せいぜい、晩ご飯持ってきてもらうくらいですよね、頼るのは、と思いながら、溜息をついたとき、誰かが後ろからスマホを取り上げた。