派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

「わからないです。
 そんな気配がしただけです。

 ちょっと過敏になってるのかも」

 なんで過敏になる必要があるんだろうと不安になる。

「渚さんじゃないなと思ったんですよ。
 ほら、あの人って、何処に居ても、俺を見ろって感じの気配が飛んでくるじゃないですか。

 気配って言うか。
 最早、粒子?」
と言うので、笑ってしまった。

 しかし、彼氏もストーカー扱いか、と思う。

「でも、今の、渚が見たら怒るよ。
 ただ食事に行っただけかもしれないけど。

 あいつ、ああ見えて嫉妬深いから。

 って、ああ見えてじゃないよね。
 見たまんまか」
と言うと、今度は蓮が笑った。

「そうですね。
 気をつけます」

 じゃあ、と蓮は手を挙げ、行きかけて、
「そういえば、なにか用事でしたか?」
と戻ってくる。

「ああいや、姿見えたから声かけただけ」

 そこで迷ったが、さっき、奏汰と居た蓮を思い出し、今、此処で言わないと、奏汰にさえ負けた気になるな、と思って言った。

「今度、憂さ晴らしに付き合ってくれるって言ったじゃない」