少し距離があったのだが、耳ざとい蓮は、すぐに足を止め、振り返った。

「ああ、脇田さん。
 おうち、こっちでしたっけ?」
と間抜けなことを言う。

「……違うよ。
 今、石井奏汰と一緒だった?」
と訊くと、一瞬詰まり、渋い顔をする。

「そうなんですよ」

「なに? なんかまずい話?」

「いや、別にまずくはなかったんですけどね。
 ところで、さっきから、脇田さん、私の後ろに居ました?」

 どきりとしながら、
「え、居たけど」
と言うと、

「そうですか」
とちょっと考えている風な顔をする。

「あの、ちょうど、そこで姿が見えてさ」
と言い訳をしようとしたとき、蓮が言った。

「会社出たところからずっと居ました?」

「いいや」
と言うと、

「やっぱりそうですか」
と表情を曇らせる。

「秋津さん、もしかして、誰かにつけられてる?」