派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 

 

 ピンポーンとチャイムが鳴ったとき、蓮はどきりとしていた。

 渚さんかな、と思う。

 だが、インターフォンを覗くと、そこには未来が映っていた。

「未来?」
とドアを開けると、

「ごめん。
 今日はなんにも手土産ないよ」
と笑わずに言う。

「稗田社長は来た?」
と問われ、思わず、

「まだだけど……」
と言うと、

「やっぱり今日も来るんだ」
と言う。

「い、いや、わかんないわよ。
 そう毎日は来れないんじゃない?」
と慌てて言った。

 未来に言われると、親や未来の叔母に咎められている感じがするからだ。

 未来は、腰に手をやり、溜息をついて言う。

「いいや。
 たぶん、あの人、今日も来るよ」

 蓮、と真面目な顔で呼びかけてきた。