派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 抱いていた手を離し、視線を蓮の位置まで下げて問うと、彼女は赤くなって言った。

「だから、わざわざ断らないでくださいって言――」

 言い終わる前にキスしていた。

 そう言うということは、いいんだろうと思って。

「愛してるよ、……蓮」

 そう囁くと、蓮はもうこちらも見られないくらいに赤くなって俯いている。

 なんでこんなに可愛いんだろうな、と思いながら、
「お前は言わないのか」
と訊くと、

「言えません」
と言ってくる。

「言え」
「言えませんっ」

「言え!
 社長命令だ」

「ええっ?
 じゃあ、会社辞めますっ」

「莫迦め、お前、派遣社員だろうが。
 この会社、配属されてるだけじゃないか」

 ああっ、そうだったーっ、という顔をし、
「じゃあ、派遣会社辞めます~っ」
と叫び出す。