脇田が出て行ったあと、渚は、黙って椅子に座っていた。
……だから、いっそ、早い方がいいかと思ったんだがな。
脇田の消えた扉を見る。
脇田が蓮に気があるのには気づいていた。
ならば、長引かせるより、早くにケリをつけた方がいい気がしたのだが。
遅すぎたのか。
元より、そんなことでは解決できないことなのか。
わからんな。
今まで、恋とかしたこともなかったから。
仕事の交渉なら、駄目になる交渉でも、早い方がいい気がするんだが。
うーん、と思っていると、扉がノックされる。
その音だけで、何故か、蓮だとわかった。
「はい」
と言うと、案の定、蓮がお盆を手に入ってきた。
お盆を片手に、一度後ろを向いて、扉を閉めるという動作が、不器用な蓮には難しいらしく、ちょっと危なかしい感じだった。
側に行き、お盆を支えてやると、こちらを振り返り、蓮が苦笑いする。
「す、すみません」
「いや……」
と笑うと、蓮は照れたように視線を外した。



