「何処かスケジュールは空いてるか?」

 社長室に入るなり、いきなり、そう言ってきた渚に、脇田は、
「なにか用事でも入りましたか?」
と訊いた。

「蓮と結婚しようかと思って」

 ちょっと反応が遅れてしまった。

「それ、秋津さんに許可貰いました?」

 案の定、いや、と言う。

「……渚」

 社長室で勤務時間にどうかと思ったのだが、此処は友人として、一言、と思い、言ってしまう。

「お前、そういうことを一人で決めるなよ」

 椅子に座ったままの渚がこちらを見上げて言う。

「もちろん。
 蓮の親にも言うよ。

 ちょっと手間取るかもしれないが」

「そうじゃなくて、秋津さんは、それでいいって言うのかって訊いてるんだよ」

「蓮は反対しない。
 ……と思う」

 さすがにそこは言い切らなかった。

 少しは人のことを考えるようになったか、と思う。

 そういう意味では蓮と出会ったのはいいことなのかもしれないが、と溜息をつく。