「おっと。
 この話は此処までね」
と言う葉子は、急いで仕事に戻っていた。

 すぐに秘書室のドアが開いて、脇田が現れる。

 なんで来るのがわかったんだ。
 足音だろうか。

 さすが秘書の鑑だ、と思っていると、脇田が社長室に入るのを見て、葉子は小声で言ってきた。

「まだ、脇田さんには、社長と付き合ってるって言わない方がいいわよ」

「なんでですか?」

 職場恋愛は禁止だと怒られるとか? と思っていると、うーん、と葉子は困った顔をしたあとで、

「ま……社長がつるっとしゃべるとは思うけどね」
と言っていた。