派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 



「じゃ、行ってきまーす」

 急いで出す郵便物があるので、蓮がそれを持って裏の郵便局までお使いに行くことになった。

「はい、行ってらっしゃい」
と葉子が子供がお使いに行くのを見守るように微笑んで送り出す。

 此処に入ったのが、蓮でよかったな、と脇田は思っていた。

 葉子は面倒見はいいが、気の強いところもあるので、恐らく似たタイプだったら、ぶつかっていただろう。

 姉御肌の葉子に、彼女を、親分っ、と慕いそうな蓮。

 いい組み合わせだった。

 渚はちゃんとそんなところも見たうえで、蓮を秘書に連れてきたのだろう。

 ……それにしても親分って、と自分の発想に笑いそうになる。

 蓮を眺めていると、どうも発想が妙な具合になって困る。

 社長室から本部長が腰低く出て行ったあと、扉が開いて、渚が現れる。

「蓮は?」
と彼女が居ないのに気づき、訊いてきた。