派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 



「すみません」
と絆創膏も貼れず、どうしようもないので、氷で冷やしたハンカチを渚に渡した。

「結局、俺がお前に傷物にされたわけだな」
 責任取れよ、と言ってくる。

 と……取れませんよ。

「出血多量かな。
 目眩がしてきた」
と渚はハンカチで口許を押さえて、目を閉じる。

 えーと。

「数滴しか出てないですよね?」
と確認させるように言うと、渚は蓮の膝を手で叩いてきた。

「なんですか?」
「少し横になりたいんだが」

「……なればいいじゃないですか」

 怪我をさせたやましさから、膝枕しろと言う渚の要求を飲む。

 自業自得だろ、と言いたくもあったのだが。

 膝に横になった渚は口にハンカチをやったまま、目を閉じていた。

 なんか……照れるな。

 膝に渚の頭の重さを感じながらも、蓮はそこから視線を逸らした。

 しばらく、そのままじっとしていたが、やがて、気づく。

 ん?
 ……寝息?

「えっ、ちょっと、今、何時ですかっ」
と慌てて壁の時計を見た。