結局、見栄を張るのはやめ、つまみになりそうなお惣菜と、酒を買ってもらって帰った。

「なんだか恥をさらして帰っただけのような気がします」

 渚が荷物を持ってくれているので、手ぶらで歩きながら呟くと、

「別にいいじゃないか。
 人には得意不得意があるんだ。

 お前が料理が作れなくとも、俺は構わん」
と言ってくる。

「……だから、何故、作れないと決めつけるんですか~」
と揉めている間に家に着いた。

 お惣菜を温め、二人で、テレビを見ながら、軽く呑む。

「美味いな、このタンシチュー」

「でしょーっ。
 パンとワインに合うんですよ~っ」

「勝ち誇るな、お前がコンビニの店員か」
と言われた。

 少し社内の話になり、いつもはしかつめらしい顔をしている部長が実は奥さんには頭が上がらないとか。

 孫のために夏休みの宿題の工作を作っているとか、微笑ましい話を聞いたりして笑った。

 渚は見てないようで、社内の人間のことをよく見ている。

 あんまり下には降りてこないのになーと思った。

 ソファに座り、ぼんやり深夜番組を見るともなしに眺めていると、横に座った渚が訊いてきた。

「ところで、傷を見せてみろ」