わかっている。
 そんな呑気な仕事でないことくらい。

「いいんですよ、別に」
 ちょっと愚痴っただけです、と蓮は言った。

「それに、仕事してる渚さんはちょっと格好いいかなって思いますし」

「じゃあ、好きか?」

「……どうしてそう、結論を急ぐんですか」
と言うと、

「考えてるよ」
と渚は言う。

「仕事中もお前のことを。
 早く会いたいと願ってる」

 いや、会ってますけどね、今も、と思っていると、その考えを読んだように、
「いや、二人きりでだ」
と言ってくる。

 だが、すぐになにか思い出したらしく、なにも言わずにさっさと社長室に戻っていってしまった。

 これだからな、もう~と振り返り、見ていたのだが、扉が閉まった途端、
「やだーっ」
と葉子が叫ぶ。

 き、聞こえますよ、と思ったのだが、休み時間だからいいのか、葉子は、かまわず叫んだ。

「いいじゃない。
 いいじゃない。

 正直言って、社長、幾ら男前でも、あんまり女性にマメじゃないから、結婚相手としては、どうなのかなって思ってたんだけど」

 そんなこと思ってたんですか……。