派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~

 



「おはようございます」
「おはよう、蓮ちゃん」

 翌朝、秘書室に初出勤すると、葉子はもう来て、お茶の用意をしていた。

「すっ、すみません。
 いつもより早く来てみたんですが」

 まだ早い方がいいようだ、と思い、時計を確認する。

「あら、違うのよ。
 私はバスと電車の乗り継ぎの都合で、随分早くに着いちゃうだけなの」

 気にしないで、と葉子は笑う。

「早めに来て、此処でお茶飲んだり寛ぐのが好きなの」

 そこで声を落として、葉子は言った。

「此処では、いつも気を使ってばかりじゃない?
 だから、此処で一人がお菓子とか食べたり、たまに本を読んだりして自由に過ごすと、なにかこう、やってやったっ、て感じがしてスッキリするの」

 だから、早く来なくてもいいのよ、と言ってくれる。

 ほんとやさしくて可愛い人だな、と思う。

 自分もこんな先輩になりたいなと思ったが、派遣社員なので、いつ、違う会社に変わるかわからない。

 残念だな、と思っていた。

「おはようございます」
と葉子が振り向き、挨拶した。